銘酒の里-魅力まるごと!1804年に創業した福井県平寺町に蔵を構える黒竜酒造は、精密でクリアな吟醸酒高い評価を得た!
銘酒の里-魅力まるごと!1804年に創業した福井県平寺町に蔵を構える黒竜酒造は、精密でクリアな吟醸酒高い評価を得た!
1804年に創業した福井県平寺町に蔵を構える黒竜酒造は、
精密な作りによるクリアな味わいの吟醸酒高い評価を得てきた。
8代目当主・
水野直人さんが一貫して取り組むのは日本酒の価値の向上。
ヴィンテージ日本酒「無二」の卸値を
バイヤーの入札で決めるなど
新しい試みにも果敢に挑戦する。
6月、水平寺町下條法隆寺地区に立ち上がった
「ESHIKOTO(えしこと)は、
そんな水野さんが10年来構想してきた複合施設である。
総面積は約3万坪、
うち今回オープンした約1万坪には貯蔵庫とイベントスペースからなる「臥龍棟」、

約1万坪には貯蔵庫とイベントスペースからなる「臥龍棟」!
販売とテイスティティングのためのショップやパーソナリティ併設のレストランが入る「酒楽棟」、
私見醸造所、5万本貯蔵可能な地下蔵が立つ。
異種ん何やら分かりにくい「ESHIKOTO」という名前は、
水平時の「水」すなわち
「とこしえ」の逆読みという。
古語の「良し」の意を重ねて「良いこと」の意味も込めた。
伝統を踏まえつつ未来にむけたプロジェクトとしての名称であり、
スパークリング日本酒梅酒など
黒竜にとって新しい領域のブランドでもある。
福井県の種米五百万石で仕込み、
15箇所以上の瓶内に二次発酵発泡酒「ESHIKOTO AWA(えしこと・あわ)」、

15箇所以上の瓶内に二次発酵発泡酒「ESHIKOTO AWA(えしこと・あわ)」!
福井発祥の品種・新兵太夫を頭上で完熟させて自然落下した実で作る梅酒、
いずれも朱烙棟ショップのみで販売される。
「ESHIKOTO AWA」貯蔵する臥龍棟は、
鹿鳴館をはじめとする明治の西洋建築を多く手掛けて、
日本建築界の礎を築いたジョサイア・コンドルの
曽孫サイモン・コンドルの設計によるもの。
100年前の酒蔵の敷板、解体される古民家から引き取った笏谷石、
大径木の産地として名高い福井市宮前地区に生えていた
樹齢200年の杉の木など、
時を重ねた地元の素材が要所要所に福井のアイデンティティを刻む。
オープン当初から訪れる人は引きも切らず、
一様にゆったりと伸びやかに過ごす姿が印象深い。
その理由は、酒蔵棟の景色から見渡す景色にある。
水面がうねる九頭竜川の流れと向こう岸に広がる人里、
取り囲むようにそびえる山々。
春のは川のほとりを桜が彩り、
夏には滴るばかりの緑にあふれ、
冬ともなれば一面の銀世界。
どの季節に訪れても陶然となる景色だ。
景観資産という言葉がある。
名所旧跡や歴史的建築物ばかりでなく、景観も資産であり資源。
どんな景観が資産としてふさわしいのか、その捉え方が時代とともに変わってきた。
稀少な景観ばかりでなく、人々の営みとともにある日常的な景観の価値が再認識されている。
ESHIKOTOが立つのはそんな場所だ。
「地元の人々には当たり前すぎて普通の田園風景に写っていたと思う」と水野さん。
35軒の家々と棚田があったが、
一部は休耕田化していたそれらを、
丁寧に構想を説明して譲り受けた。
「日本酒造として200年以上続いてきた
信頼の上に託してもらったと受け止めている」。
プロジェクトは足元の土地を価値化してゆく作業でもある。
「そもそものきっかけは、
1990年代ブルゴーニュやナパバレーなど
欧米のワイン銘醸地を旅した折、
そのホスピタリティとプレゼンテーションに感銘を受けたことでした」。
土地が育むブドウとワインの特質を語るワイナリー、
地元の食材を駆使した料理で歓待するレストラン、
そのありようが地域の評価を高め、
世界中からゲストを招いていると感じた。
もともと黒竜は、繊細な甘みを持つ越前ガニなど地の食材に合う味わいを先代が追求し、
独自の研究を重ねて醸された、地域の特性を大切にする酒だ。
欧米のワイナリーような取り組みができないか?
温め続けた思いを形にすべき動き出したのが10年前だった。
「酒造コネクターと」水野さんは考える。
「酒造が100年200年と存続するのは、
酒造りが農業、
林業、
神事や歳事記、
工芸など様々な領域を取り結んでいるから。
2024年春には北陸新幹線が敦賀まで延伸する。
「県外や海外から来訪客も増えるでしょう。
ESIKOTOを拠点として、
福井を中心とした北陸の様々な文化を案内する役割を果たしていきたい」
世界的に著名な禅寺のお膝元に位置しながら、
そのメリットが十分に生かされていたかとの反省もある。
酒楽棟のレストラン「acoya(あこや)」では永平寺にちなみ、

酒楽棟のレストラン「acoya(あこや)」!
お膳スタイルのランチや朝膳を用意する。
「この景観を満喫してもらうには空気の清浄なな朝がいい」
と語るのは同店を営む林真史さん。
今後、
朝ヨガや座禅、
写経などの
早朝イベントや近隣の生活者による
週末マルシェも計画中だ。
水野さんはこの壮大なプロジェクトを
デベロパーに頼らずに頼らず、個人で進めてきた。
「困難はたくさんあったが、自分の中では、
これまでの苦労よりこれからの責任の方が多くを占める」。
24年までには醸造ラボ、オーベルジュなども立つ予定だ。
フードジャナリスト 君島佐和子
井上明義撮影。
日経新聞 TheSTYLE/Gourmet より。
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