海風が運ぶ・ロマン!アサギマダラ・2200キロの旅!大分・姫島に集まる蝶の大群!

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こんなに美しいアサギマダラ、その移動距離が凄い!

海風が運ぶ・ロマン!アサギマダラ・2200キロの旅大分・姫島に集まる蝶の大群!

 

大分の姫島にアサギマダラという不思議に満ちた美しい蝶がいる。なんとこの蝶は九州から北海道を旅すると言う。何故か調べてみたら、その移動距離は距離2200kmでした。

[驚異の飛翔2200キロ アサギマダラの神秘]八ケ岳では初夏から夏の終わり、ときには秋半ばまで、身近に見かけるアサギマダラ。この小さな蝶が日本列島を縦断、さらに南の沖縄や台湾まで延べ2200キロ㍍以上を飛んでい くのです。翌年春、その逆のコースを日本に渡ってきます。 近年その不思議な旅が明らかになりつつあります。

アサギマダラ ヒヨドリバナにとまったアサギマダラ。八ケ岳では夏じゅう見られる。バードフィーダー の縁で八ケ岳で 知り合いの及川正彦氏(八千代市)撮影。夏、かなり長期間にわたって、我が山小舎の周辺はもちろんのこと、八ケ岳周辺のいたるところで見かける蝶のひとつにアサギマダラがいます。 左の写真をみれば、ああ知ってる!という方も多いでしょう。

しかし、私にとっては長い間、ただの蝶でした。最近まで名前も知らなければ、識別も出来なかったのですが、驚くべき習性を知ってすっかり魅せられました。知らなければ野鳥も昆虫も植物も、ただ自然の一部ですが、ひとたび知識を得ると、そこから興味尽きない世界への扉が開かれる。そんなことも教えてくれたアサギマダラ の話です。

フジバカマで羽を休めるアサギマダラ。

[アサギマダラのプロフィール]八ケ岳では夏に長期間見かける、と書きましたが、このこと自体たいへん恵まれたことです。渡りの途中の平地などではほんのいっとき という場所も多いのです。八ケ岳はアサギマダラに夏の滞在地として大変気に入られていて、7月下旬から、旅立ちの時期は確認してませんが多分8月下旬から9月上旬 くらいまで見か けます。そう紹介したのですが、2013年5月23日、野辺山の標高1400㍍あたりでハルザキヤマガラシの花に止まっているアサギマダラを撮影したと「黒彪」さんからお知らせ をいただきました。そうすると、八ケ岳では5月末から9月まで見られるわけで、蝶の愛好家にとってはまさに夢のような場所なのです。ヒヨドリバナの項で書きましたが、無知なときは草刈機を振り回して切り倒していたこの地味な植物が、 いまポーチから手の届くところで人間の背丈ほどに育っていますが、これがアサギマダラの主な食草というかお気に入りの花です。この花の蜜目当てに 他の蝶と一緒にアサギマダラがつぎつぎとやってきます。見ればだれでも名前を知りたくなるきれいな蝶です。

海を渡る蝶・アサギマダラは謎につつまれている。

アサギマダラ (Parantica sita niphonica)はタテハチョウ科マダラチョウ亜科に属し、前羽が4-6センチほどの大きさで、羽を広げると10センチ前 後になります。黒と褐色の模様と、ステンドグラスを思わせる透けるような薄い浅葱(あさぎ)色の斑(まだら)紋様の羽を持っています。胸にも特徴 ある斑模様があり、これが名前の由来です。

[なぜこんな遠距離旅行をするのか]アサギマダラを有名にしたのはその渡りのすごさです。春から夏にかけては本州等の標高1000メートルから2000メートルほどの涼しい高原地帯を繁殖地とし、秋、気温の低下と共に適温の生活地を求めて南方へ移動を開始し、遠く九州や沖縄、さらに八重山諸島や台湾にまで海を越えて飛んでいきます。海を渡って1000キロ以上の大移動です。台湾・陽明山まで飛んだのはこれまで5個体が確認されていますが、これなど2100キロの飛翔になります。また逆に冬の間は、暖かい南の島の洞穴で過ごしています。新たに繁殖した世代の蝶が春から初夏にかけて南から北上し、本州などの高原地帯に戻るという生活のサイクルをきちんと守っているのです。季節により長距離移動(渡り)をする日本で唯一の蝶なのです。

アサギマダラの主な移動ルート。

[キジョラン] キジョランの葉は多くの蝶の食草になる。少し前まで「アサギマダラは平地では5月ごろに成虫が現れ、夏は平地では見られず、山地へ集まる。そして、秋になると再び平地に見られるようになり、冬でも枯れないキジョラン(鬼女蘭)だけで幼虫越冬をする」と考えられていました。

[キジョランの花] キジョランの花。キジョランというのは、蘭の名がついていますがガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物です。つるの長さは5メートルほどあり、 関東以西の山地の林内に木にからみついて生えます。幅10センチほどのほぼ円形の葉がありますが、これが多くの蝶の食草になります。 左の写真で葉に穴があるのはアサギマダラが食べた跡です。キジョランは直径1センチたらずのかすかに芳香のある小さく白い花を咲かせ、その後に大きな実をつけます。果実は幅4センチ、 長さ10センチほどに成長し、晩秋に縦に裂けて長い冠毛を持った種子が風に乗って飛ぶのですが、この艶のある冠毛を 鬼女が髪を振り乱した姿に見立てたのが名前の由来です。2009年3月、アサギマダラに魅せられ、キジョランを育てているという静岡県掛川市の中野二志男さんから花や種子の写真をいただきましたので、右上や左右で紹介しました。

[マーキング調査始まる]長らくアサギマダラは各地でキジョランを食べて越冬すると考えられていたのですが、沖縄本島で観察をした人が、4月の中・下旬頃と秋の10-11月頃のある日、突然ものすごい数のアサギマダラが現われたと思うと、 数日でまったく見られなくなる。その後、食草を調べても卵も幼虫も見られない・・・このことから、沖縄で見られるアサギマダラは、集団で移動する途中に 立ち寄るだけではないだろうか、と考えました。そこで、1980年から鹿児島はじめ全国の有志によって、羽に油性ペンでマークをつけて放し、次にそのチョウ が見つかったところを結んで移動経路を調べようという調査が開始されました。マーキングといいますが、このおかげでいまではこのチョウが春と秋に北へ、南へという季節を変えた移動をしていることがはっきりしてきたのです。大阪を拠点とする「アサギマダラを調べる会」(ホームページがあります)などが中心になって観察組織が作られていて小中学生までマーキングに参加しています。そうした人たちのおかげで近年そのルートが解明されてきていますが、毎年記録が更新されているといってもよいほどです。

調査のためのマーキング。

[分かってきた、そのすごい旅]渡りの地図 分かってきた渡りのルート。東北・関東からいったん紀伊半島に集結、一気に喜界島まで飛ぶ。なかには台湾にむけて飛ぶのがいることもわかってきた。(産経新聞05年10/30から)当初は、こんなに長距離飛行するとは考えられていませんでした。信州松本でマーキングされた個体が、海を渡り1300キロ近く離れた沖縄で確認された。高知県大月町から沖縄県南大東島まで約783キロを3日で渡った。一日平均260キロも飛んだ、と驚いていました。1995年9月29日に大阪府生駒山でマークされたアサギマダラが、10月18日沖縄・八重山諸島の与那国島まで1680キロを17日間で飛んだ記録がしばらく南下の最長移動記録でした。しかし、こんなものではなかったのです2002年には、福島・北塩原村-沖縄・黒島の2140キロ・メートルが記録されました。これで東北以北で暮らす個体も沖縄以南へ渡っていることがはっきりしました。そしてこれが渡りの「日本記録」でした。4年ほどですが。[日本記録]渡りの日本記録のアサギマダラ=玉置高志さん撮影

さらに記録は伸びました。2006年8月、「アサギネット」を主宰している日本チョウ類保全協会代表理事で京都学園大非常勤講師の藤井恒さんらの研究グループが、山形・蔵王スキー場でアサギマダラ約1700匹にマーキングして放したのですが、そのうち同行した京都市の専門学校生、藤井大樹さん(21)が8月26日にマークしたメス1匹が、今度は11月20日に現地に出向いていた三重県松阪市の玉置高志さん(58)の手で、与那国島・久部良岳の山頂で見つかりました(06年11月27日 読売新聞)。直線距離にして2246キロ・メートル。2002年の記録を100キロ上回り、これが目下のところ南下の最長記録です。

実は11月初めには台湾南西部の島で、9月24日に長野県大町市で放されたアサギマダラが再捕獲され、この移動距離は約2190キロでした。4年間の日本記録を50キロ抜いたのですが、わずか半月でまた50キロ更新されたことになります。まだまだ記録は伸びるでしょう。

 

姫島で乱舞するアサギマダラ。

なんでこんな長距離を移動できるのか不思議!喜界島や姫島が突然アサギマダラだらけに!!

 

[アサギマダラ集結の名所、喜界島と姫島]渡りの地図 喜界島は渡りの途中の集結場所として有名。秋にたくさんのアサギマダラが集結する場所として、奄美大島の東の喜界島や大分県の姫島が知られています。小さな島がある日突然アサギマダラだらけになり、3,4日 で皆いなくなるといいます。これを見に愛好家が集まるほどです。すっかり有名になった中継地、大分・姫島のアサギマダラのすごい写真 群舞 大分県・姫島で見られるアサギマダラの群舞。あまりにすごいので紹介しますが、中継地である大分県国東半島(くにさきはんとう)沖の姫島(姫島村)でのアサギマダラの群舞です。絵画のように見えますが カメラマンによる実写です。2008年5月28日の毎日新聞に掲載されたものですが、役場によると毎年5月初旬から6月初めまで、島北部の、みつけ海岸に自生するスナビキソウの群生地に何千という数が集まるそうです。国内有数の大規模中継地といってよいでしょう。例年、5月上旬から6月上旬にかけて飛来、3-5日ほど滞在して北に渡る体力をつけては次々と北に 飛び立っていくといいます。下で紹介したNHKの番組「ダーウィンが来た!」もこの姫島でのアサギマダラの乱舞の撮影から始まっています。

フジバカマが好きなようだ。

マーキング調査により、本州のアサギマダラは徐々に南下して、いったん和歌山県に終結、紀伊半島あたりから四国・阿南市付近に上陸し、少しずつ移動しながら室戸岬付近に集まり、風を見計らって室戸岬や足摺岬などから大海原へ出ていくという流れがあると考えられています。これは、ある年の9月14日に長野県上村のしらびそ高原で標識をつけた19匹のうちの1匹が、約1か月後の翌10月18日、約350キロ離れた和歌山県白浜町内で発見され、同じそのアサギマダラが11月2日、さらに約950キロ南下した沖縄・南大東島の魚釣場で再々捕獲されたことから判明したのです。約1か月半かけて、和歌山県を中継地に、長野ー沖縄・南大東島まで移動しています。驚くべき飛翔力です。さらに近年では長崎あたりから、台湾に飛ぶルートもあることが報告されています。 移動のルートが判明し始めるとともに、どうも大空に蝶たちが通う「蝶の道」があるのではないかと推測されはじめています。行きと帰りでルートが違うことも明らかになってきています。北上の記録は1995年5月31日鹿児島県種子島から飛び立って、7月16日福島県白河市で確認された1羽で、46日間で1200キロ飛びました。 北限としては、山形県藤島町が報告されています(2000年9月)。しかし、いまでは、津軽海峡を越えて函館から報告が来るようになりました。後述のように地球温暖化とも 関係しますが、どんどん北上しているようなのです。

[北海道・上ノ国町まで飛んだ個体] 上ノ国町は道南にある。例えば、2013年6月6日の記事ですが、「アサギマダラが、大分県から約1160キロ離れた北海道・上ノ国町に飛来。九州から北海道までの 移動は初確認」と見出しにあります。函館市の愛好家グループ「道南虫の会」メンバーらがアサギマダラ1匹を捕獲したもので、羽に「ヒメ」「5/21」などと書かれており、大分県姫島村の「アサギマダラを守る会」が5月21日、村から放った 雄と判明した。捕獲したチョウは再びマーキングして放した。道南虫の会の事務局長で函館工業高校教諭の対馬誠さん(56)は「どこから来たのかやっと解明できた。今後も 調査を進め、飛行ルートの解明につなげたい」と話した。(産経新聞電子版)上ノ国町は津軽海峡を渡ってすぐの江差と隣り合った所で北海道では比較的暖かいところです。姫島というのは上でアサギマダラの群舞の写真とともに紹介したように 渡りの途中の場所として有名な島です。ここでマーキングされたのですが、姫島に来るまでに台湾 か中国のもっと南で生まれているわけで、1160キロどころではない飛翔距離になる可能性があります。と同時に飛んでいく先は札幌、旭川、稚内、ひょっとしてサハリン‥‥という 可能性も秘めています。温暖化の影響とともに研究が待たれるところです。国境を越えて日本に来ていることは、2000年に台湾台北市北部の陽明山でマークされた2個体が、鹿児島県と滋賀県でそれぞれ再捕獲されて、初めて明らかになりました。 でも、移動の範囲の全貌は明確になっていなくて、まだまだ謎だらけの蝶です。

[アサギマダラ 卵から幼虫→蛹→羽化まで] これまではアサギマダラの移動のすごさばかりに焦点を当ててきましたが、本来の生態について説明します。アサギマダラは日本の南西部、中国南部から西北ヒマラヤにかけて分布し、成虫は長距離を移動することで有名です。南西諸島では冬でも卵から成虫まで全てのステージが見られ、決 まった越冬態はありません。熱帯に種数の多いマダラチョウ科は本来南国のチョウですが、アサギマダラはその中でも温帯で越冬できる耐寒性の強い種で、関東以西の沿岸部付近などでは、冬が近づくと常緑性で あるキジョランなどの食草の葉裏に産みつけ、九州以北では非休眠の1-3齢幼虫または卵で越冬します。越冬できる北限は東京付近までで、これは冬でも利用できる常緑の食草であるキジョランの北限に一致します。

このギジョランの葉裏に卵を産みつける。

夏世代の幼虫はカモメヅル、オオカモメヅル、コバノカモメヅル、イ ケマなどの落葉生のガガイモ科植物も利用しています。幼虫はなかなか派手な姿で、黒の地に黄色の斑点が4列に並び、その周囲に白い斑点がたくさんある姿をしています。前胸部と 尾部に2本の黒い角があります。東京以南の低山の林では新緑の頃、キジョランの葉に丸い孔をあけたような独特の食痕を残しながら成長しているのが見られます。このような食痕ができるのは、まず円形に噛み傷を 付けてから、その中を食べるためですが、このような面倒なことをするのは、ガガイモ科植物が持つアルカロイド系の防御物質の通り道を噛み傷によって遮断し、食べるべき場所を隔離 してから食べ始めるためです。またキジョランなどは幼虫のかじりあとから乳液を出しますが、この乳液で食べやすくしているためだと考えられています。このような有毒物質を遮断する噛み傷を付けることをトレンチングといいます。トレンチングはウリ科の葉をたべるウリハムシやトホシテントウなど、系統的に離れた分類群 に見られ、独立に進化した現象であることがわかります。4-5齢に育った幼虫は葉の基部に噛み傷をつけて1枚の葉をしおらせて丸ごと食べるようになります。その後、蛹(さなぎ)になりますが、蛹は垂蛹型で、尾部だけで逆さ吊りになります。蛹は青緑色で、金属光沢のある黒い斑点があります。(森林総研HP、自然探訪2009年5月などから) 【卵】アサギマダラの卵 アサギマダラの寿命は羽化後4-5カ月で、与えられたその生涯時間内で2000キロを移動するのですが、この間に代をつなぐべく産卵します。卵はキジョランなどの葉の裏に ポツンと1個から3個ほど産みつけます。9月中旬までに生まれた卵は、11月上旬までに羽化して南下の旅に加わり、それよりあとに産卵されたものは、幼虫のままキジョランの葉 裏で冬を越してからさなぎになります。

このアサギマダラが海を渡るとは到底思えない。

今日は、アサギマダラの不思議を調べましたが、その行動範囲の広さにびっくり仰天。更に、私は姫島のアサギマダラの爆発的に群がる群舞に驚きを隠しえませんでした!2200kmの移動距離と言い、姫島の群舞と言い、アサギマダラの測り知れない身体能力の高さは、どこに隠されているのか知りたいものです!姫島には「アサギマダラを守る会」がありますが、この会はアサギマダラをいかに大事に思っているかの証!!アサギマダラはまだまだ神秘のベールに包まれた不思議な生態が、徐々に明らかになるでしょう!!

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    私はかなり高齢な建築家です。出身は伊豆の湯ヶ島で多くの自然に触れて育ちました。少年時代の思い出も記事になっています。趣味が多くカテゴリーは多義に渡ります。今は鮎の友釣りにハマっています。自然が好きで自然の中に居るのが、見るのが好きです。ですので樹木は特に好きで、樹木の話が多く出てきます。 電子書籍作りも勉強して、何とか発売できるまでになりました。残り少ない人生をどう生きるかが、大事です。