池内博之の漂流アドベンチャー1!
南へ600km!大海流・黒潮の先に奇跡の島が!池内博之の漂流アドベンチャー1!
世界有数の大海流・黒潮。その流れの先に奇跡の島がある。
水も木も無い無人島だが、江戸時代、多くの難破船が黒潮に流されて漂着。
漂流者の中には10年20年生き延び、生還した者もいる。
漂流民はどのような体験をし、何を思ったのか?
彼らを生き延びさせた島の秘密とは?
俳優の池内博之が、漂流記を手がかりに、実際にヨットで黒潮の流れに乗り、その島を目指す。
たどり着いた島で知る、もうひとつの奇跡の物語とは。
池内博之がこれまでに漂流者の命を救ってきた無人島を、自ら“漂流者”となり紹介する。
東京から南へ600kmの太平洋にある、ジョン万次郎の命も救った無人島へ。
池内はヨットに乗り、その無人島まで漂流を体験。
島に着いた池内は、漂流者の命をつないだという鳥の正体を探る他、漂流者の生活と脱出の足跡に迫る。

黒潮に乗って奇跡の島へ!
太平洋。
どこまでも広がる海の中に まるで川のように流れる激流がある。
世界最大の海流の一つ 黒潮だ。この黒潮に流されていくと その先に「奇跡の島」があるという。
江戸時代 嵐に流された漂流者がたびたびたどり着いた。そして10年20年も生き延び 故郷に生還したのだ。
いったいどんな島なのか?
漂流記によると そこは無人島。
水も木もない絶海の孤島だ。
いたるところに怪しげな鳥が住むという。
彼らはなぜそんな過酷な島で命を繋ぐことができたのか。
多くの漂流者を押し流した黒潮に乗って 僕もその奇跡の島へ行ってみたいと思った。
漂流者たちは大海原で何を感じ 島でどんな体験をしたのだろう。
僕の10日間の冒険の記録だ。
遠く赤道付近から北上してきた黒潮が日本の本土に最初にぶつかる場所だ。
黒潮に乗るにはまさにうってつけだ。黒潮とともに生きてきた土佐清水市。
毎日新鮮な魚が水揚げされる。
4月30日。僕の冒険はこの港から始まった。
「あー天気もいいし最高!」さっそく航海に使用する船を訪ねた。

僕の冒険はこの港から始まった!
迎えてくれたのは艇長の長谷川富延さん。
ヨット歴は40年以上。
数々のレースで優勝してきたベテランのヨットマンだ。
船名は“ローズ・デイ・ベンティ”。
“風のバラ”という意味だそうだ。
ヨットは江戸時代の漂流者たちが載っていた帆船と同じように風で走る。
帆を下せば黒潮を漂流することもできるはずだ。
「よいしょ・・・おぉ。あー広い!広いですよ」。
船の中は想像以上に設備が整っていた。
キッチンやベッドルームもある。

船名は“風のバラ”という意味だそうだ!
「波の音が聞こえますねここ。こんな感じなんだ。すごい狭い!
はあーおもしろいな」。
しかし海の上は常に死との隣り合わせ。
乗船中は命綱が必要だという。
(艇長)「船から落水することは本当に危険。死につながりやすい。
まあそこの点だけね。
必ず落水しないように。
いくら自分が泳ぎが得意だと言っても泳いで泳ぎ切れるもんじゃないですから。
絶対船から離れないということをまず注意していただくということが一番重要ですね。」
艇長の言葉に身が引き締まった。
「リアルに今回の旅は・・・不安。めちゃくちゃ不安ですよ。
だって・・・天候次第でどうなるかわからないし、しかもヨットでの生活ってやっぱなかなかないし。
もうほんとうにあとはもう流れに任せてどう対応していくか・・・。
でもやっぱり不安ですよ。だって何が起こるかわからないから。」
翌朝早朝6時。
「いやー・・・いよいよ出発。」期待と不安が入り混じる中、船出の時を迎えた。
風のバラ号のクルーは艇長の長谷川さんを筆頭に、総勢5人。
みな30年以上のヨット歴を持ち、中には世界の海を縦横無尽に航海してきたつわものもいるそうだ。
この日の天気は雲一つない快晴。
風がないため帆は上げず エンジンを使ってしばらく走るという。
港を出ればいよいよ黒潮だ。
「結構波荒れてるような気がするけど穏やからしいです。
・・・穏やかじゃないじゃないですか!これ穏やかですか!?(笑)不安だ・・・。
どうなっちゃうんだろう。」足摺岬を左に見ながら 黒潮に乗って東へと向かう。
(船員)「上げますセールアップします!」
わずかながら西風が出てきた。追い風を捉えようとクルーたちが帆を上げ始める。
ヨットは一人一人が力を合わせなければ動かない。僕も手を貸すよう言われた。
(船員)「重くなってきたらウィンチハンドルで引かないとダメ。
逆に回すとスピードが倍になる。
OKOKOK」「OK?ハイ。」「共同作業でしたね」安全な航海のためには見張りも欠かせない。
船やクジラとの衝突は命取りになるからだ。
24時間走り続けるヨット。見張りは交代で務め、非番の者は昼寝。
身体を休ませることも大切な仕事だという。僕も見張りを買って出た。
「コンテナ船かな?なんだ?あれなんですか?
向こうに見えるの。
ビルみたいに立ってるやつ。」日本の太平洋沿岸に沿って流れる黒潮は海上交通の大動脈でもあるようだ。
帆に風を受け風のバラ号は一気に速度を上げた。
黒潮の流れも相まって時速は20キロ以上に達している。
黒潮は世界最速の海流。
場所によっては秒速2mにもなる。
出港して10時間。
室戸岬の沖合に黒潮の流れを実感できる場所があった。
高知県が漁礁として設置した巨大なブイ。
大きさは直径10mもあるが黒潮の激流に翻弄されている。
鳥島こそ長平たちがたどり着いた“奇跡の島”だ!
土佐清水から南東に750キロ。鳥島こそ長平たちがたどり着いた“奇跡の島”だ!!
「緯度経度からいうと鳥島っていうんですよ。
今は人が住んでいません。無人島です。」「無人島なんですか!?
あんなでっかいんですか、土佐清水から南東に750キロ。
鳥島こそ長平たちがたどり着いた“奇跡の島”だ。
「嬉しいな。島が見えてきたってだけで・・・」(艇長)
「4日ぶりに島を見るのは感動するでしょう。
「感動ですよ!」海岸には高さ100mを超す断崖が続く。
赤茶けた斜面には木もほとんど生えていない。
「早く鳥島に上陸しましょう!
早く上がりたいです!」
だが鳥島に近づくにつれうねりは増した。
一体上陸できるのだろうか。
(艇長)「上陸!?ムリ!!これだよ!?」残念だが嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
夕方激しい雨が降り出した。
「おっしゃー!
4日ぶりのシャワー!」翌朝水平線から朝日が昇った。
まだうねりは残っているがこれなら上陸できそうだ。だが鳥島は甘くなかった。
断崖が続く海岸線はいたるところ岩礁に覆われ 近づけばヨットは間違いなく座礁する。
一体どこから上陸したらいいのだろう。
長平たちは島の西側から上陸したという。
僕もそこからエンジン付きのゴムボートで上陸することにした。
共に航海してきたヨットのクルーたちとはここでお別れだ。
この島にはヨットが停泊できる港はない。今でさえ大きな危険が伴う鳥島への上陸。
長平たちはまさに決死の想いだったに違いない。島の西側には小さな入り江があった。
安全確認のために先に上陸したスタッフにロープを投げる。
4日ぶりに触れる揺れない地面。
思わず全身から力が抜けた。
「一安心。陸地に着けたっていうのは。やっぱり海は怖いですよ。」
10日間にわたる僕の冒険が終わった。
「ありがとうございました!」太平洋に浮かぶ絶海の孤島鳥島。
“奇跡の島”と呼ばれるこの島はこれからどんな命のドラマを紡ぐのだろう。
いつの日かアホウドリで真っ白に染まったこの島を僕はこの目で見たいと思った。
2016/07/19追記
番組で取り上げられていた長平は、四国から鳥島にたどり着くまで、参考資料1によれば14日間漂流したと言われています。
同じく四国から鳥島まで流されたジョン万次郎「の場合は、参考資料1によれば7日間漂流したと言われています。
番組では、海流の影響が強調されていましたが、実際の漂流については風の影響も考慮に入れる必要があります。
また、黒潮に流されたとして、必ず鳥島にたどり着くというわけではありません。
漂流してもあっさり助かった人たちは記録に残りませんし、助からなかった人たちも歴史に消えていきます。
鳥島に漂着した人たちは、大変な条件ながらも、生還することがあり、大きな物語になります。
以上のことをことわった上で、ここでは番組に提供した海流情報を解説します。
黒潮の流路の型はいろいろな分類がありますが、図1では4つを描いています。
このうち(典型的)大蛇行流路、非大蛇行離岸流路、
非大蛇行接岸流路については2015/02/06号「黒潮の位置はどのように変化するの?」で紹介しました。
これに加えて、非大蛇行離岸流路の離岸が大きく発達した場合、非典型的大蛇行流路と呼ばれることがあります。
離岸の大きさは黒潮が北緯32度線の南を通るかが基準になることが多いです。
非典型というのは、典型的な大蛇行は八丈島の北を通過するという特徴があり、それ以外は非典型的ということになります。

黒潮の流路の型はいろいろな分類があります!
非大蛇行接岸流路の時期と、非典型的大蛇行流路に変化していく時期のアニメーションが紹介されていました。
漂流した人々が遭遇した黒潮の状況は今となってはわかりませんし、
どれだけ黒潮の流路の違いが重要だったかもケースバイケースでしょう。
単に黒潮の流れだけ言えば、黒潮の離岸が大きい方が鳥島に近づきやすいとは言えるかもしれません。
参考資料1は、漂流状況の記録と漂流時間が短かったことから、
ジョン万次郎の漂流の時は黒潮大蛇行であったという仮説を提唱しています。
以前黒潮で紹介しましたが—–黒潮の水が塩分が高いという描写がありました。
黒潮は、雨が相対的に少なく蒸発が多い亜熱帯を流れてくるために塩分が高いです。
また、川などの影響がある沿岸よりも塩分が高くなります。
一方、親潮域は塩分が低く、2015/08/07号「親潮は甘い」で解説しました。
図4は2016年5月10日の西太平洋の海面塩分分布です。
私のブログで9月5日に「世界最大の海流!ブロ塩は赤道を流れて!三陸沖で親潮と出会う!」で紹介しましたが、その中で黒潮の積乱雲は、栄養豊かな海を作り出す。
まず森を豊かにし、川を豊かにし、流れて海に注ぐ!
森のミネラルの8割は海に流れ、黒潮と出会い、プランクトンと出会う。
を紹介したように森と海との繋がりが、黒潮に出会って海を豊かにしているのです!
今日は「池内博之の漂流アドベンチャー1」を紹介しましたが、
この後の「池内博之の漂流のアドベンチャー3」が凄く面白いのでご期待下さい!
コメントを残す