ブラックホール銀河で何を!ブラックホールは多くの人になじみが、謎に満ちた天体だ!一度入ったら出られないブラックホール!
ブラックホール銀河で何を!ブラックホールは多くの人になじみが、謎に満ちた天体だ!一度入ったら出られないブラックホール!
近くの物質や光を吸い込み、一度入ったら出られない――-ブラックホールは多くの人になじみがあるが、謎に満ちた天体だ。
どのように生まれ、何をしているのか。なぜ銀河の中心にあるのか。
その手がかりを掴むため、天門学者たちはもっとも近くにある巨大ブラックホールにねらいを定めてきた。
5月、ついにその姿の撮影に成功したが、天門学者たちは深まる謎の解明に早くも動き出している。
「これが私たちの住む銀河の中心にある巨大ブラックホールの姿です」。
5月12日の記者会見を見て国際研究チームが発表した画像には、オレンジ色のドーナツに囲まれた穴ような黒い影が写っていた。
最も近い「いて座Aスター」と呼ぶ巨大ブラックホールを撮った画像だ。
質量は太陽の約400万倍で、地球からは2万7000千光年ほどの距離にある。
ブラックホールの撮影としては2019年の公表に続く2例目になる。
世界8か所にある電波望遠鏡を連動させ、地球大の望遠鏡に見立てた。
視力は地球から月の上のゴルフボールが見えるほど高い。
いて座Aスターは当初から撮影対象だったが、10時間ほどかかる観測の間に
数分単位で激しく変化するため、画像の処理に時間がかかった。
17年の観測から5年かけてが画像にすることに成功した。
「次は動画の撮影だ」。
日本チームの代表を務めている国立天文台の本間希樹教授はこう話す。
これまでの2回の撮影はいずれも静止画で、変化している様子は見えなかった。
動画を撮影できれば、回転する様子や周辺のガスの動きまで詳しくわかる。
「ブラックホルの理解が革命的に進む」と本間教授はいう。

見えぬ素顔、次は動画撮影!しかも動画で撮影出来れば、そのヒントが得られるかもしれない!
見えぬ素顔、次は動画撮影!しかも動画で撮影出来れば、そのヒントが得られるかもしれない!
巨大なブラックホールがどのように生まれ、何をしているのかは大きな謎だ。
なんでも吸い込むときくブラックホールだが、実は吸い込みきれなかった物質を勢いよく吹き出している。
超高速で吹き出すガスの存在からは、次々とエネルギーを放出する場所という別の顔が見えてくる。
動画で迫るのは、噴出するガスの様子だ。周辺のガスを吸い込み大きく成長する瞬間も捉えられると期待が膨らむ。
動画観測は、ブラックホールが何故銀河の中心にあるのかという疑問を解く手がかりも与える。
ブラックホールの質量は、常に銀河の質量の1000分の1程になる。
この不思議な関係から「銀河が誕生して今の姿になる上でなんらかの役割を担っていたであろう」(本間教授)。
銀河を地球サイズのほどに見立てるなら、巨大ブラックホールは米粒より小さくなる。
銀河に影響を与えるとしたら何がそれだけのエネルギーをもたらすのか、興味は尽きない。
動画を撮るには望遠鏡の数を増やして画質を向上させる必要がある。
過去2回の撮影で使った観測網には、その後、グリーランドなど3カ所の望遠鏡が加わった。
北米、
南米、
アフリカにも増設して二倍に増やす計画もある。
すでに設置している望遠鏡の改良も進めており、
解像度の向上を目指して早ければ23年にも短い波長を観測に使えるようにする。
画像解析の手法も動画用に改良を重ねている。
これまで静止画の撮影に成功した2つのブラックホールは、地球から大きく見えた。
現材の望遠の性能ではこの2つを撮るのが限界という。
そのほか2つのブラックホールは小さかったり、地球から遠かたりする。
望遠鏡を地球サイズより、何倍も大きくしないと撮影はできない。
電波望遠強を宇宙に浮かべ、地球の外側にも観測網を広げれば撮影出来るが、現状では予算のめどは立っていない。
別のブラックホールを撮影できるようになったら、天門学者は何を見たいと考えているのか。
本間教授は「宇宙が生まれたばかりのころのブラックホールを撮影して見たい」と目を輝かせる。
なんでも吸い込むイメージが強いブラックホールと銀河の誕生は、一見すると矛盾する現象のようにも思える。
無数に存在する巨大ブラックホールがどのように生まれて何をしているのか。
様々な年代で、しかも動画で撮影出来れば、そのヒントが得られるかもしれない。
(遠藤智之)

線で見た天の川銀河の中心。中心から右上と左方向に広がるガスが赤く見える。赤は低エネルギー、青は高いエネルギーを示す!
X線で見た天の川銀河の中心。中心から右上と左方向に広がるガスが赤く見える。赤は低エネルギー、青は高いエネルギーを示す!
Q. 先生はX線天文学を専門とされていますが、X線天文に惹かれた理由は何でしょうか?
X線で見た天の川銀河の中心。
中心から右上と左方向に広がるガスが赤く見える。
赤は低エネルギー、青は高いエネルギーを示す。
(提供:NASA/CXC/MIT/F.K.Baganoff et al.)
X線は人間の目には見えない光です。
その光が、可視光で見られない天文現象をいろいろ見せてくれるのに惹かれました。
X線は多くの情報を提供してくれますが、
その情報が宇宙の大部分に関係するのもいいですね。
可視光を出す星はとても美しく、宇宙の大事な構成要素でもありますが、
宇宙全体を知るには星以外も見ないと分かりません。
いろいろな波長で、いろいろな宇宙の姿を見ることが必要だと思いますが、
私の場合はエネルギーが高い現象に興味がありましたので、
X線がぴったり合ったという感じです。
Q. X線はブラックホールの観測に適しているのでしょうか?
ブラックホールの近傍は非常にエネルギーが高いため、X線で観測するとよく見えます。
特に暗いブラックホールは、X線でしか見つからないと思います。
一方、
明るいブラックホールは、
可視光や赤外線、
電波など他の波長でも見ることができますので、
それらを組み合わせて観測することも重要だと思います。
Q. そもそもブラックホールとは何でしょうか?
ブラックホールとは、密度が非常に高く、強力な重力場を持つ天体です。
光でさえもその重力場から出てくることできないので、ブラックホール自身は光を出しません。
ですから直接観測はできませんが、
ブラックホールに吸い込まれるガスが超高温になり、
X線などのエネルギーを放出して明るく輝きますので、それがブラックホールの存在を教えてくれます。
全てではありませんが、ほとんどの銀河の中心にブラックホールが存在します。
これまでの観測により、2種類のブラックホールの存在が知られています。
1つ目は、超新星爆発の後にできるブラックホールです。
太陽の30倍以上の大質量の星が、
その一生を終えるときに超新星爆発を起こすと、
中心部が自己重力に耐えられず、極限まで収縮してブラックホールになります。
この時のブラックホールは太陽の10倍程度の質量です。
2つ目は、太陽の百万倍~数億倍以上の質量がある巨大ブラックホールです。
この巨大ブラックホールについては、どのようにできるのかは今もまだ謎です。
Q. 先生が専門とされる研究は何でしょうか?
代表的な研究成果を教えてください。
私の主な研究テーマは銀河や銀河団の形成史で、
それに関連して銀河の中心にあるブラックホールを研究しています。
これまでの成果としては、ヨーロッパの
X線天文衛星「ニュートン」による、おとめ座銀河団の研究があります。
この銀河団の真ん中には銀河M87という大きな銀河があり、
その中央に太陽の質量の約1億倍もある巨大ブラックホールが存在します。
このブラックホールから、非常に高いエネルギーのガスが噴き出しているのをとらえました。
ブラックホールというのは、その強力な重力で周囲のものを何でも吸い込みますが、
それと同時に、非常に高いエネルギーを周りに供給しているのです。
一方、銀河団の中心部はガスの密度が濃いため、X線の放射が強くエネルギーを放出しています。
普通は、エネルギーを放出し続けると次第にエネルギーを失い、
ガスが冷えて温度も低くなるはずなんですが、銀河団の中心部ではX線の放射が続いています。
そのためには何か熱を与えるものが必要ですが、その候補の1つが、質量の重いブラックホールです。
銀河の中心にある巨大ブラックホールがエネルギーを放出し、
周囲のガスを温めていると考えられています。それを裏付けるような成果になったと思います。
Q. ブラックホールが銀河形成にどう影響していると考えられていますか?
ブラックホールの想像図
(提供:ESA/NASA/AVO/Paolo Padovani)

銀河の総質量と比較して、ブラックホールの質量が大きい!
銀河の総質量と比較して、ブラックホールの質量が大きい!
矢印は、天の川銀河の近くにある矮小銀河Henize2-10にある、超大質量のブラックホール。
銀河の総質量と比較して、ブラックホールの質量が大きい。
(提供:X-ray (NASA/CXC/Virginia/A.Reines et al); Radio (NRAO/AUI/NSF); Optical (NASA/STScI))
銀河の形はその多くが中央が膨らんだ円盤型をしていますが、
その中心部の膨らみを「バルジ」と言います。
いくつかの銀河を対象に、巨大ブラックホールの質量とその
母銀河のバルジの質量を測定した結果、この2つが比例関係にあることが分かりました。
これは、巨大ブラックホールの形成と銀河の形成が密接に関係していることを意味します。
おそらく銀河と巨大ブラックホールは一緒に成長していったと思われます。
考えられるシナリオはこうです。
宇宙の大きさが今の半分か3分の1くらいだった
100億年くらい前に、巨大なブラックホールはまだ成長過程でした。
そのどこかのタイミングで、ブラックホールはとても活発になり、
高いエネルギーを放出して、星の形成を促しました。
星がどんどんできれば銀河も大きくなっていきます。
ブラックホールが成長すると同時に銀河も成長していったのです。
また、ブラックホールの成長につれて吹き出す高エネルギーのジェットが、
星の材料となるガスを吹き飛ばすこともあったかもしれません。
詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、
銀河と巨大ブラックホールの共進化が考えられています。
Q. ブラックホールと銀河はどちらが先にできたのでしょうか?
それは「ニワトリが先か卵が先か?」と同じような議論ですね。
ブラックホールと銀河はどちらが先にできたかまだ分かっていません。
最近の観測で初期の小さな銀河に、超大質量のブラックホールが発見されました。
これは先ほどお話したブラックホールと銀河の質量の相関関係から見ると、
銀河の大きさに比べてブラックホールが大きすぎるんですね。
また、その銀河の内部で星が活発に形成されていることも分かっています。
ですから、ブラックホールの方が先だと考える人がいるかもしれませんが、
1つの銀河を調べただけでは結論を出せません。
ブラックホールがない、あるいは検出されていない銀河もありますからね。
また星と星、あるいは銀河と銀河が合体してブラックホールができた
可能性も考えられますので、この議論はまだ当分の間続きそうです。
JAXA より。
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